遺骨の引取でお寺さんにお伺いすることも多くなりました。その時にあれこれ普通では聞けないお話もします。例えば墓じまいをしなかった場合どんな結末が待っているのか?などです。
結論から先に述べますと、お墓をそのままにしておくと無縁墓(むえんぼ)になり半永久的にそのまま放置されます。お寺が片付けることはあまりありません。古いお寺などに行くと朽ち果てたお墓などがありますよね?あんな感じです。お墓の下にある遺骨もそのままです。墓石はとても丈夫ですから300年も500年もずっとそのままでしょう。
墓守の承継者に毎年通知が届きます
お墓には必ず祭祀承継者が選定されますので、墓地管理者はその承継者に対して毎年通知を行っていると思います。承継者はこの通知を受け取ると共にその年の法要をお寺と相談していつにしようか決めるわけです。
法要は任意ですから強制権はありませんが、ご先祖様が檀家になったわけですから承継者として責任を自覚して一年に一度程度は連絡くらいははされた方が良いと思います。お寺側も法要というのは遺族の生存確認も兼ねているそうで、年に一度、法要に来てくれることで「あぁこのお墓はまだ無縁墓にならずに済むな」と安心するそうですから。
法要とは別に、墓地を借りるときに管理契約書を交わしている場合は別途「墓地管理料」を支払う義務が生じます。さすがに一般のお寺から少額訴訟を起こされたという話しは聞きませんが、自治体や一般法人などが管理している場合、督促状が届いたという話しは聞いた事があります。
格式のあるお寺などは、この管理料を長年支払わずに、ある日突然「墓じまいをしたいのですが・・・」と連絡すると和尚さんが怒るパターンがとても多いです。
ですので、墓じまいをする際はまず管理料の支払いが溜まっていないか確認し「どうもすみませんでした」と詫びてから支払いを済ませた後でお話をするのが良いと思います。
しかしながら最近は墓じまいも歓迎ムードが漂ってます。檀家は減ってしまいますが無縁墓は無くなりますのでお寺としてもその方がホッとするというのが理由だそうです。お寺にとって最も恐れているのは無縁墓が増え続けて新しい遺骨を受け入れることができなくなることだそうですから。
この毎年管理費の支払いが負担に思えてきたら、それも墓じまいのタイミングなのかも知れません。
祭祀承継者に連絡が取れなくなったお墓はどうなる?
基本的には特になにもせず放置状態となります。
区画整理など、どうしてもお墓を撤去する必要がある場合は、まず遺族の存在を何度も確認し、それでも連絡が無い場合は官報に「○○寺△△区のお墓を撤去します」と掲載し、1年経過したら法律上は撤去できます。
出てきた遺骨はお寺の中にある永代供養墓に移され、お墓は解体されて更地となります。
ですが実際はここまでするお寺はほとんどありません。墓石の撤去にはどんなに安く依頼できたとしても墓石の処分費に10万円以上はかかりますし、古いお寺の永代供養墓は既に一杯です。
永代供養墓は一般の方には決して目に触れる事はないと思いますが、中には大きな穴を掘ってガラガラと投げ入れ土をかぶせて誤魔化しているだけのお寺や霊園などもあります。「ひどい!」と思うかも知れませんが、そうするし遺骨の最終処分方法がないのです。
解体した墓石は粉砕して遠い山の中に廃棄処分されます。都内の石材店のお話では神奈川県の山の中に運ばれてゆくらしいよと言ってました。どうやら石材店も最終処分場がどこだか知らないようでした。ちょっと怖いですね。墓石の最終処分もこれまた社会問題なのです。
実はお墓って土地を借りてるだけ
あの墓地は先祖が買ったものだ!お墓を勝手に処分するなんてどういうことだ?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、実のところ墓地は借地なのです。住宅地のように所有権はなく、何十年につきいくらという価格で貸している土地なのです。なので期限がきたら返却しなくてはならないのです。
墓地を購入する際に「永代供養付き」となっている意味は「遺族が供養しなくてもこちらでやっておきますよ」という意味であり、墓地を永久に販売したという意味ではでないのです。紛らわしいですよね。
自治体の運営する墓地はこのあたりが厳格で、販売の際にきちんと説明もあると思いますが、民間霊園は曖昧な所も多く、うやむやのまま購入しているケースも多くありますので知らない方も結構いらっしゃいます。
![墓じまいの様子](https://funkotsu-service.com/article/wp-content/uploads/2024/08/hamajimai.jpg)
とは言えども実際は、祭祀承継者に連絡が取れなくなって期限を過ぎても放置されている墓地も多いのが実情だそうです。
こうした事態を避けるために自治体などは連絡先を複数求めたり、毎年通知確認するなど徹底していますがそれでも音信不通になってしまうケースが多くとても困っているそうです。
ちなみに多くの民間霊園は石材店が運営母体であるケースが多いです。墓石を売るなら墓地が無ければ売れん!ということで墓地販売も一緒にやっています。ですので、そういった霊園で樹木葬を購入すると必ず高価な石版プレートもセットになってます。
お墓の下にあった遺骨はどこにいくの?
墓じまいをすると遺骨は、お世話になった菩提寺にそのまま永代供養するのが慣例でしたが、永代供養料が1体あたり何十万もします(私が知る限り最高値は神奈川県の某寺の1体70万円です)。相場は都心部で1体30万円、地方で20万円前後の所が多いようです。
累代が長いお墓の中にはご先祖様達の遺骨が眠ってますので、多い方は10体以上あります。仮に1体25万円だとすると、永代供養料だけで250万円かかるわけです。これはお金のかかる現代において厳しい出費です。
そこで埋蔵してあったご遺骨を改葬手続きして取り出して、安価な自治体の永代供養墓に引っ越しするのが流行ってます。
東京都立霊園(小平霊園・多摩霊園)の樹林墓地なら粉骨料金別で28,000円~、千葉市(平和公園)樹木葬なら粉骨料金込みで1体40,000円で納骨することができます。15万円や30万円に比べれば破格値です。
![千葉市・平和公園・樹木葬](https://funkotsu-service.com/article/wp-content/uploads/2024/08/tree-funeral-heiwa-park-chiba-city.jpg)
ところがこれらの樹木葬は人気ゆえに抽選なのです。これがなかなか当たりません。
しかも当選してから改葬できれば良いのですが、手元に遺骨が無いと応募ができないので墓じまいの場合はお墓から取り出した遺骨をどこかで保管しながら抽選待ちをしなければならないのです。
一度埋蔵した奥さんの遺骨を掘り出して自宅に置いて、毎年抽選したけど当たらず4年後に諦めて海洋散骨した方もいらっしゃいました。
墓じまいしたら遺骨は海洋散骨がお勧め
そこで搭乗したのが海洋散骨という新たな永代供養方法です。(永代供養というと仏教寄りの思想ですが、遺骨を弔い恒久的に手放すという意味で使わせていただきます。)
令和2年3月に厚生労働省が散骨事業者向けのガイドラインを発表しました。内容は「散骨するなら遺骨は粉骨しましょうね」とか「川には撒いてはダメですよ」といった内容です。
これは業者向けのガイドラインですが、厚生労働省が散骨を認めた画期的な公示でした。この事からも海洋散骨は違法ではありませんので、永代供養の1つとして選択しても良いと思います。
さて気になる料金ですが、弊社の場合は海洋散骨の代行です。皆様の代わりに船に乗って散骨してきます。散骨と言うと遺族が船に乗って実施するイメージが強いのですが、遺族のお休みに晴天を当てるのはとても難しいので私たちは代行のみにしています。
お墓の下で眠っていた遺骨を乾燥させて粉骨し、東京湾北部へ海洋散骨すると1体あたり3万円(税込)で代行できます。
この料金には不要になった骨壺の処分料や散骨の時に撒くお花代、粉骨証明書や散骨証明書の発行手数料なども全て含まれてこの値段です。
抽選もありませんし自治体の永代供養墓に入れるよりも安価です。海洋散骨は改葬ではありませんので改葬手続きも不要ですし、火葬埋葬許可証が無くても散骨できます。メリットしかありません。
![散骨 東京湾で海洋散骨](https://funkotsu-service.com/article/wp-content/uploads/2024/08/1200x628-2023-summer-1024x536.jpg)
墓地から遺骨を運ぶのが大変であれば、墓じまいの日(閉眼供養)に合わせてご遺骨お迎えサービスを呼んでおけば、弊社スタッフが霊園に引取に行きますので遺骨を自宅に持ち帰らないで済みます。墓下から遺骨を出す作業などは石材店がやってくれますので手が汚れることもありません。
呪われたり不幸が起きたりしますか?
余談ですが、夏になると自称霊能者の方が現れて「お墓を放置しているからあなたは・・・」等と夏を盛り上げてくれます。それって実際どうなんだろ?と思い、いろんな住職さんにそういう話しを聞いてみた時期がありました。
お寺ももいろんな宗派があり、考え方が異なりますが大半は「そんな事はないでしょうね」とおっしゃってました。先祖が子孫に対して恨んだり呪ったりすることは無いだろうとおっしゃってました。
ただ先祖を敬うという思想は大事にしなければならないのでお参りはちゃんと来てくださいねとニッコリ笑っておっしゃってました。コロナ禍は法事が減って大変だったそうです。
キリスト教の方もいれば神道の方もいますし、いろんな思想があるので一概には言えませんが、お墓を建てた以上は子孫が継承して墓守して大事にされた方が良いとは思います。
お墓には故人も魂もいないかもしれませんが、遺された方の心のより所として大切な役割を持っていると思います。
そうやって守り抜いてきても最後は継承者が途絶えてしまうのは仕方がないことです。昨今は少子化で継承者不足が墓じまいの一番の理由になっています。
その時は仕方が無いのできちんと墓じまいをして、きちんと後片付けをするのは最後の一人の大事な役割だと思います。そんな方々を私たちはサポートさせていただきます。