遺骨(焼骨)を最も早く自然に還す方法は?

粉骨の専門家 遺骨

樹木葬墓地を新たに作ろうと考えてる石材店や、自治体の永代供養墓を設計しようと考えている方々からの相談を受けることがあります。

遺骨の最終的な受け入れ先としての「合祀墓」や「永代供養墓」としての役割を果たすために「遺骨を自然に還す期間」というのは考慮すべき重要なポイントになると思います。

ただ、この分野においては特化した実験や検証などは行われたことがありませんので具体的な数字が出せずにお困りかと思います。

そこで、粉骨の専門家として1万件以上の遺骨に携わってきた私が、「最も早く自然に還す」ために必要な基礎知識と、考慮すべきポイント、その根拠や研究結果などを公開したいと思います。

ちょっと専門的なお話になりますので「結論」を先に書いておきます。必要に応じて目次を辿ってください。

自然に還す「定義」を決めておく

「遺骨が自然に還る」という言葉には、法律・文化的な観点(概念の定義)と科学・化学的な観点(物理的な定義)の2つの側面的意味があります。ここでは遺骨を自然に戻すという目的から物理的な定義を決めておこうと思います。

物理的に「自然に還る」とは、遺骨が水や土中の酸によってイオン化して溶け出し(溶出ようしゅつ、植物の栄養(リンやカルシウム)として吸収されることを指します。

ただし、この溶出と吸収には時間経過や状態などによって環境差が生じますので、本書では溶出できる環境まで整えることを「自然循環に戻す」と呼ぶこととします。

☝️結論|最も早く自然循環へ戻す5つのポイントを抑える

焼骨は木や紙などの有機物とは異なり、微生物によって短期間で分解されるものではありませんが、以下の5つのポイントを抑えることで、より早く自然循環に戻すことが可能になります。

方法理由効果
1位:粉骨する接触面積を増やせる表面積を増やすことで溶出速度を10倍以上が期待できる
2位:骨壺から出す土壌と直接接触する陶器の骨壺から出すことで土に触れることができる
3位:森林へ樹木葬する腐葉土と接する微生物が発酵・分解する過程で発生する「有機酸」による分解
4位:果樹の下に埋める落下した果実による有機酸と腐敗による菌類との接触クエン酸やリンゴ酸などの有機酸によって溶出しやすくなる
5位:海に散骨する海水と広く接触し拡散する淡水と混ざりやすい湾や冷たい場所、水圧の高い場所などは溶出しやすい
遺骨を早く自然循環へ戻す5つのポイントを解りやすくイラスト化したもの

この中でも、焼骨を粉末状にする「粉骨」は、自然環境との接触面積を10倍以上に増やすという点でとても重要な工程になります。さらに、粉骨した状態で酸性度の高い土中や、淡水の混ざりやすい湾などに散骨することで、焼骨に含まれるカルシウムやリンなどの成分が周囲へ溶出する機会が飛躍的に増えます。

特に果樹木や腐葉土の下は、カルシウムを溶出してイオン化するスピードが劇的に早まるため、本章の目的でもある「いち早く遺骨を自然に還すには?」という目的を達成しやすい環境が整うのでおすすめです。

著者
著者

つまり「コンクリートで囲んだカロート内に納骨」や「骨壺に入れたまま埋蔵」してると自然に還る環境はほとんど整わないということになります。

粉骨すると自然に還りやすくなる理由

粉骨とは、火葬後の焼骨を細かい粉末状に加工することをいいます。海洋散骨や樹木葬など、遺骨を自然へ還す方法では、多くの場合この粉骨という工程が行われます。

粉骨を行う大きな理由の一つは、焼骨と自然環境との接触面積を増やすためです。粒子が細かくなることで、表面積が10倍以上にもなり、土や水など周囲の環境と触れる部分が増え、含まれる成分が自然環境へ戻ってゆく過程がスムースになります。粉骨による主な変化は以下の通りです。

粉骨前粉骨後
骨片が大きく、内部は環境と接触しにくい細かな粒子になり、自然環境と接する部分が増える
一箇所にまとまりやすい広い範囲へ分散・浮遊しやすい
表面積が小さい表面積が増加する

粉骨は「骨の原型を崩す処理」に加え、焼骨に含まれるカルシウムやリンなどの成分が、より自然環境と関わりやすくするための工程でもあります。

例えば、同じ量の焼骨であっても、大きな骨片の状態では表面部分だけが環境と接触します。一方で粉末状にすると、一つひとつの粒子が周囲の水分や土壌と触れるため、自然環境との関わりが爆発的に増えます。

2cm四方の骨片を2mm程度に粉骨した遺骨の表面積が10倍になるということをイラスト化したもの

仮に2cm四方の骨片を2mm程度に粉骨した場合、表面積は単純計算で10倍です。リン酸カルシウムの表面は細かな凹凸がたくさんあるので実際の表面積は10倍以上になると思われます。つまり、粉骨すると10倍のスピードで自然環境に変化する可能性があるということになります。

火葬前の骨と、火葬後の骨の違い

人が亡くなった後、火葬した遺骨は正式には「焼骨しょうこつ」と呼びますが、一般的には「遺骨いこつ」と呼びます。火葬後の骨は、生前の身体にあった骨とは全く異なります。

生前の骨は、主にリン酸カルシウムなどの無機成分と、コラーゲンを中心とした有機成分によって接合構成されています。骨は硬い組織ですが、内部にはタンパク質などの有機物が含まれており、しなやかさや強度を保つ役割を果たしています。

一方、火葬では高温の熱によって水分や有機成分が失われます。その結果、火葬後に残る焼骨は接合部分の有機質が焼け落ち、主にカルシウムやリンを含む無機質が中心となります。見た目は骨の形を残していても、成分や性質は生前の骨とは異なる状態になっています。

焼骨は何からできている?主成分は?

焼骨の主成分は「ヒドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム)」といい「リン酸カルシウム」の一種です。化学式はCa10(PO4)6(OH)2で、骨や歯の主成分としてインプラントの被覆材にも使われています。ヒドロキシアパタイトは生前の骨にも多く含まれる成分で、骨の硬さを支える役割を持っています。

hydroxyapatite
学術的な読み方はドイツ語で「ヒドロキシアパタイト」で、一般的には「ハイドロキシアパタイト」と呼ばれています。

他にも同じグループ内に歯磨き粉や飼料として使われている「リン酸一水素カルシウム」や、ベーキングパウダーとして有名な「リン酸二水素カルシウム」などがあります。

その他の成分として、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ナトリウムやカリウムなどの無機元素や炭素などが含まれますが、生前の骨に多く含まれていたコラーゲンなどの有機成分は、火葬時の熱によって分解されるため、焼骨ではごくわずかしか残りません。

著者
著者

「生前に悪かった所が黒くなる」というのは迷信です。黒い部分は有機物が炭化した部分であり、有機物の燃焼に部位差はありませんので、癌など悪かった部分だけが黒く残るということはありません。

焼骨の主成分割合を円グラフ化した図
成分構成割合の目安主な特徴
リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイトなど)約60〜70%程度焼骨の中心となる成分。骨の硬さや形状を保つ主要な無機成分
炭酸カルシウム約5〜10%程度カルシウムを含む成分の一つ。骨のミネラル構成に関係する
リン酸マグネシウムなどの無機成分数%程度骨に含まれる微量のミネラル成分
その他の無機元素(ナトリウム、カリウムなど)数%未満生前の身体に含まれていた微量元素
炭素0.5~1%程度ヒドロキシアパタイト内で結晶化してる
有機成分(コラーゲンなど)ごく少量火葬による高温で大部分が分解・消失

※成分の割合は、火葬の温度や時間、個人の身体状態などによって変化します。

なぜ焼骨は自然分解されにくいのか?

「遺骨は土に埋めれば自然になくなるのでは?」と考える方も多いかもしれません。しかし、火葬後の焼骨は、生前の骨とは性質が変化しているため、微生物によって分解されるものではありません。

その大きな理由は、火葬によって有機成分がほとんど無くなり、リン酸カルシウムを中心とした無機成分が多く残るためです。焼骨の主成分であるリン酸カルシウムは、鉱物に近い性質を持ち、環境中で安定した状態を保ちやすい特徴があります。

比較項目有機物(植物・生物など)焼骨
主な成分炭素を含む有機物リン酸カルシウムなど
分解の主体微生物による分解化学反応による溶出
変化の速さ数日~数カ月数十~数百年

ただし、「焼骨は永遠に残る」という意味ではありません。リン酸カルシウムも土壌の性質、水分量、酸性度、粒子の大きさなどの条件によって、少しずつ成分が周囲の環境へ移動(溶出)していきます。ただし、そのスピードは決して早いものではありません。

溶出とは?…リン酸カルシウムが土壌中の水分や海水と長期間接触することで、カルシウムやリン酸「イオン」として自然環境へ移行することです。

焼骨が自然に還るまでの流れ

火葬後の焼骨は、骨壺に入れた状態であれば半永久的にその状態を保っています。粉骨したり土に埋めたり、海に散骨したりすることで、時間の経過とともに少しずつ自然循環へ戻ってゆくことができます。

ただし、生前の身体のように微生物によって腐敗や分解が進むわけではありません。焼骨の主成分であるリン酸カルシウムなどの無機成分が、周囲の環境との関わり(酸や微生物)の中で徐々に分子レベルへ変化し、自然の循環へ移行していきます。

焼骨が自然へ還るまでの流れは、主に以下のような段階で進みます。

段階状態の変化内容
① 火葬直後骨の部位が判るほど原型を残した状態高温によって有機成分が失われ、リン酸カルシウムなどを含む焼骨が残る
② 粉骨処理一片2mm以下の粉末状態粒子を細かくすることで環境との接触面積が増える
③ 自然環境へ移行粉末から粒子化土や海水などと接触してさらに小さくなる
④ 成分が循環する粒子からイオン化含まれる元素が自然環境の一部として循環するようになる

焼骨が自然へ還る速度は、置かれる環境によって大きく異なります。例えば、土壌の性質、水分量、温度、酸性度、焼骨の粒子の大きさなどによって変化の進み方は変わります。

焼骨の主成分であるリン酸カルシウムは、水にほとんど溶けませんが、水と接すると弱アルカリ性を示す性質があります。一方で、酸性の環境では徐々に溶けやすくなるため、長い時間をかけてカルシウムやリンなどの成分が自然環境へ移行していきます。

また、粉骨された焼骨は粒が細かくなることで、土や海水など周囲の環境と接触する表面積が増加します。そのため、樹木葬や散骨など自然へ還す方法では、粉骨という工程が重要な意味を持ちます。

ここまでのお話でお解りいただけたかと思いますが、「自然に還る」ということは、焼骨が突然なくなることではなく、焼骨に含まれていたカルシウムやリンなどの成分が、長い時間をかけて環境の中へ移り(溶出)、自然界の循環の一部(イオン)となっていくことを意味しています。

焼骨は土の中で何年かけて自然に還るのか?

樹木葬墓地を新たに設置しようと考えている設計者の皆様にとって「焼骨を土に埋めた場合、何年で自然に還るのか?」という疑問を持つ方は少なくありません。永代供養の受け入れ先として預かった遺骨が何年くらいで還るのか?判らないまま土に埋めたりすることはできないでしょう。

焼骨は、リン酸カルシウムなどの無機成分で構成されているため、土の中では腐敗するのではなく、周囲の水分や土壌成分との作用によって、数十年~数百年という長い時間をかけて少しずつ変化(溶出)していきます。この変化は以下のような環境下ではその速度が加速します。

要因変化への影響加速率
粒子の大きさ粉骨すると環境との接触面積が増える★★★
土壌の性質酸性度が高いと溶出速度が速まる★★★
水分量水分との接触によって成分の移動速度が上がる★★☆
温度環境化学的な変化の進み方に影響する★☆☆
場所森林など落ち葉が多いと酸性土壌になりやすい★★★

一般的に、粉骨されていない大きな焼骨片は環境との接触面積が小さいため、例え酸性の土壌に触れていたとしても変化には数百年という長い時間を要します。

一方で、粉骨した焼骨は、表面積が増え、雨などで土中を移動しやすくなるなど周囲の土壌と接触しやすくなるため、数年程度で自然循環へ移行すると考えられます。

日本は雨が多く、カルシウムやマグネシウムなどの塩基性成分が流れ出やすいため、世界的に見ても酸性土壌が多い国です。また、落ち葉や腐葉土の分解で有機酸が生じ、酸性が強まることがあるため、森林地帯の土壌は酸性に傾きやすい傾向にあります。

つまり、永代供養用に直接埋葬型の樹木葬を作る場合は、酸性土壌であることがより一層早く土に還せる必須条件ということになります。

青い紫陽花アジサイが咲いていたら「酸性土壌」
紫陽花は、土壌中に溶け出したアルミニウムイオンと結び付くことで青色になります。他にもヒノキや杉、アカマツなどが元気に生育していたら酸性土壌の可能性が高いです。

これは「合祀墓用」ですが、家族用に直径30㎝程度の円形墓地を作って、他人が埋葬できないように石板のプレートで蓋をしておくと良いと思います。

著者
著者

樹木を植えるなら「果樹」が良いですね。落ちた果物には酸が多く含まれていますで遺骨の成分「ヒドロキシアパタイト」の溶出速度が激的に上がります。

海に散骨した遺骨はどう変化するのか?

海洋散骨を検討する方の中には、「海に撒いた遺骨はその後どうなるのか」「海の中で溶けてなくなるのか」と疑問を持つ方も多くいます。

散骨された焼骨は、海水に触れた瞬間に消えるわけではありません。火葬後の焼骨は、主にリン酸カルシウムなどの無機成分で構成されているため、微生物によって腐敗・分解されるものではありません。海に撒いた遺骨は海中に拡散(または海底に堆積)し、長い時間をかけて海水や周囲の環境と関わりながら、少しずつ変化(イオン化)していきます。

海洋散骨後の主な変化は、以下のような流れになります。

段階遺骨の状態環境で起こる変化
① 散骨直後粉末状の焼骨が海中へ広がる海水と混ざりながら海中へ分散する
② 時間の経過焼骨粒子が海水と接触する表面から少しずつ成分が移動(溶出)する
③ 長期間経過成分が周囲へ拡散するカルシウムやリンなどが自然環境の一部(イオン)となる

海水にはさまざまなミネラル成分が含まれており、海洋環境の中では、焼骨に含まれる成分も周囲の物質と関わりながら存在していきます。

また、海洋散骨では厚生労働省のガイドラインに従い、焼骨を細かく粉末状にする「粉骨」が義務付けられています。これは、遺骨を自然環境へ戻しやすくするだけでなく、散骨時のマナーや周囲への配慮という意味もあります。

海洋散骨後の遺骨が「何年で完全になくなるのか」という明確な期間を示すことは海域の環境(Ph)、水温、粒子の大きさ、海水との接触状況などによって変化の速度は異なるため難しいですが、常に海水に触れており、海流などにより何らかの摩擦を受けている環境、魚介類などにより大量のイオンが吸収されている事などから考察し、数カ月~数年程度で自然循環の中に移行しているものと考えられます。

海の場合、局所的なイオン化するスピードは「土壌」に負けるものの、その圧倒的な水量によって自然循環に戻りやすい環境にあると思われます。

粉骨が海中で溶出してイオン化するイメージ
海水に揉まれるこの「流動性」が溶出を早めるポイント

まとめ|焼骨は長い時間をかけて自然の循環へ戻っていく

遺骨を自然に還す=最終的には「イオン」という目的に対して道のりは長い年月を要します。焼骨は火葬によって有機成分の多くが失われ、リン酸カルシウムを主成分とする無機物へと変化しています。そのため、木や植物のように短期間で分解されることはありません。しかし、土や海などの自然環境と長く接することで、カルシウムやリンなどの成分が少しずつ環境へ移行し、自然の循環の一部となって戻ってゆきます。粉骨は、その接触面積を増やし、自然との関わりを深めるための一つの方法です。どうぞみなさん、一刻も早く遺骨を自然に還したい時は是非弊社の粉骨をご検討ください。

→まごころ粉骨HPはこちら

【筆者】舘山文成 まごころ粉骨・千葉本店(アットマガジンズ有限会社・取締役社長)- 創業25年目、散骨事業実績11年目。現在までの委託散骨実績は累計6000件以上、粉骨実績1万件以上、粉骨と委託散骨の専門家。NHK「クローズアップ現代」にも出演させていただきました。

タイトルとURLをコピーしました